フクロウは猛禽類で、ネズミや小鳥などを捕らえて食べる肉食の鳥です。
狩りに特化された消音効果のある羽根を持ち、暗闇でも獲物が良く見える、いわば生粋のハンター。
一方のカラスは、人間の出した生ごみなどを漁る雑食の鳥。
いじめると仕返しをする、独自の遊びを考え出す、道具を使ってクルミを割る、などのエピソードから、とても賢い鳥と言われています。
ですが、体や口ばしの構造も違うカラスが、猛禽類のフクロウを敵に回すなど有り得ないことに思われます。
では、なぜ「フクロウの天敵はカラス」という定説がまかり通っているのでしょうか?
カラスの天敵はフクロウ含む猛禽類。「強者VS弱者」の関係が逆転する?
インドの昔話でも、カラスとフクロウの仲の悪さは語られています。
要約しますと……
「カラスの暮らす木々とフクロウが棲む洞窟が近くにあり、日頃から互いを牽制しあっていた。或る夜フクロウが攻め込んできて、たくさんのカラスに怪我をさせた。真っ向勝負では敵わないと悟ったカラス達は知恵を絞り、一羽のカラスをスパイとしてフクロウの洞窟へ潜り込ませた。そのカラスがフクロウ達にすっかり信用された頃を見計らい、洞窟に火を放ち、全てのフクロウ達を討ち果たした。カラス達の喜びの鳴き声は辺り一帯に響き渡った」
また、民話の一つにこのような話もあります。
「フクロウが染物屋を開いた。うぐいすや他の大勢の鳥達が、フクロウの手によって美しく羽根を染めてもらっているのをカラスは羨ましく思ったので、自分も綺麗な羽根の色に染めて欲しいと注文した。カラスは元々は白くて美しい鳥だったが、フクロウが欲張りなカラスの注文に応えつつ、何度も色を染め重ねるうち、完全に真っ黒な羽根に染まってしまった。怒ったカラスは凄い勢いでフクロウに襲いかかり、これでもかと突つきまわした。それ以来、フクロウはカラスに出会うのを恐れ、夜しか外出できなくなったという」
ちなみに、白いカラスは存在します。
アルビノのカラスは「真っ白な体色に赤い眼」です。
このような話があることから考えても、カラスとフクロウがまさに天敵!というのは事実無根ではないようです。
もう少し詳しく見ていきましょう。
カラスは、フクロウ含む猛禽類が大嫌い
狩りの名人であるフクロウが、カラスの卵やヒナを捕食した例はありますが、何も好きこのんで成鳥のカラスを襲うことはありません。
また、夜間の行動は活発ですが、昼間は狩りを休んでいます。
昼間、フクロウがカラスの縄張りにうっかり入ろうものなら、カラスはここぞとばかりに騒ぎ立ててモビングします。
モビングとは、一対一では敵わない弱者の立場の鳥が集団となり、捕食者のフクロウやタカなどにうるさく鳴き騒ぎ、執拗に攻撃を仕掛ける行為のことです。
カラスにしつこくモビングされると、フクロウはその場から追い立てられるように飛び去るしかありません。
基本的に、フクロウは群れを作らないで生活する一匹狼的な鳥です。
一羽、もしくはパートナーを入れて二羽だけです。
一方のカラスは集団で生活し、個体同士のコミュニケーション能力も優れています。
多勢に無勢では明らかに不利。
夜間においては生態系の上位の位置を占めるフクロウも、昼間は強者と弱者の立場が逆転してしまいます。
フクロウとカラスの関係は?
フクロウに限らず、カラスはオオタカやハヤブサなどの猛禽類全般を天敵と見なします。
カラスのしつこい攻撃を嫌がって、猛禽類の方が逃げていくパターンが多いです。
勿論、本気で戦えばフクロウの方が勝つかもしれませんが無益な争いはしないようです。
「フクロウとカラスは天敵」ではなく、カラスがフクロウを一方的に敵視している関係です。
カラスは、フクロウ含む猛禽類(タカ、ノスリ、ワシなど)を見かけると、手っ取り早く自分たちの縄張りから出て行ってもらいたいので、本能的にモビング行動をとるのだと思われます。
モビングはカラスに限ってだけの行動ではなく、いつもは捕食される立場の小鳥でさえも、捕食者に果敢に向かっていくそうです。
カラスを含め、多くの鳥達は非常に縄張り意識が強く、ナポレオン・コンプレックス(背の低い人に劣等感を感じ、必要以上に攻撃的になるという俗説)を持つとされます。
そのため、自分より体格の良い大きな鳥を見た際、敢えて攻撃体勢をとるのです。
まとめ
人間の目から見れば「まさにフクロウとカラスは天敵!」としか思えない状況であっても、「巣が近くにあって卵やヒナがいる」とか、「縄張り意識」などから、カラスがフクロウを追い払おうとするためにモビング行為を繰り返すことがわかりました。
フクロウとしても、カラスに追い立てられ、おとなしく引き下がっているばかりではありません。
アメリカのイエローストーン国立公園では、一羽のカラフトフクロウがカラスと真っ向勝負しようと翼を広げ、不敵に待ち構えている姿が写真に収められました。
面白い話としては、アメリカ・カリフォルニア州で、
「あれっ?モビングしてたはずなのに、いつのまにか、ハクトウワシの背中に乗っちゃってるし!」
という、お茶目なカラスの写真が収められています。