フクロウは羽ばたき音が驚異的に無音であり、獲物を見つけるとそっと飛び立ち、さーっと飛んできて、獲物が気づかぬうちに忍び寄って捕まえてしまいます。

そのことから、「森の忍者」などとも称されています。

でも、なぜそのようなことができるのでしょうか?

人間の耳には無音としか感じないフクロウの羽ばたき音の仕組みについて調べてみました。

フクロウ 羽ばたき 音

フクロウの羽ばたき音が無音なワケ。秘密は、風切羽と羽根自体の柔らかさにあり

Gizmodo SPLOIDが提供している、メンフクロウとハトとハヤブサを飛ばす実験映像を見たことがあります。

それぞれを同じ距離飛ばす実験なのですが、

ハト「ギーチギチギチギチ……!」

…という、肩の筋肉(?)が擦れて出ているような、(誰しも聞いた事がある)あの音。

ハヤブサ「ブァーサブァサブァサブァサ……!」

…という、けたたましい音が辺り一帯に響きます。

メンフクロウ「………………」

しーん……正に静寂。

少なくとも、人の耳にフクロウの羽音は聞こえません。

羽ばたき音を聞く実験の後、今度は床に敷き詰めた羽毛の上を、ハト、ハヤブサ、メンフクロウに飛ばせます。

ハトが羽毛の上を飛んでいくと、ぼわーっ、と羽毛は舞い上がり、ハヤブサでは更に激しく舞い上がってしまいます。

ですが、メンフクロウが羽毛の上を飛んでも、舞い上がるどころか、羽毛は敷き詰められたまま微かな動きも見せません。

同じ鳥なのにどうして?

それは、フクロウの持つ風切羽に秘密があるのです。

そして、フクロウの羽根自体が持っている特性にも関係があります。

フクロウの風切羽

フクロウ類の風切羽(一番外側の羽)は、他の鳥とは違う独特の構造をしています。

風切羽の縁が、まるで櫛のようにギザギザとした構造になっており、羽根を上下に羽ばたいた際にギザギザの隙間から空気を逃がし、更には羽ばたきで空気の乱れを起こしにくいので、消音効果の役目を果たします。

フクロウの風切羽の構造が持つ消音効果を「500系新幹線のパンタグラフ」にも応用したことで、30%の騒音削減に成功したそうです。

フクロウの狩りのスタイルには、この風切羽は欠かせないものです。

例えば、タカの仲間のハリスホーク(和名:モモアカノスリ)は、狩りの際、上昇気流に乗って空高く舞い上がります。

羽根は短く硬く、木々の間を擦り抜けて飛ぶことができるので、上空を旋回しながら獲物を探し、目を付けた獲物がいればガーッと追跡して捕らえます。

ハリスホークの硬い羽根が風を切って飛んでくる音は、小動物を恐怖で動けなくしてしまう効果があるそうです。

ワシやタカの仲間は、時速およそ130kmで飛ぶことができます。

追尾スタイルの狩りの方法です。

フクロウは、めぼしい獲物が目につくのを木の上に止まって待っています。

首を270度回しつつ、ネズミなどが走る足音に聞き耳を立てています。

夜でも獲物は良く見えるので、獲物を見つけると、フクロウは音もなく飛び立ち、羽ばたき音を無音にし、(タカのように早く飛べないので)獲物にそぅっと近づいて狩りをします。

フクロウは、種類にもよりますが、時速およそ72 kmで飛ぶことができます。

ギザギザの切れ込みが入った風切羽から空気が抜け、音が出にくくなるのです。

待ち伏せスタイルの狩りの方法です。

但し、昆虫を主食にしているスズメフクロウや、魚を主食にしているウオクイフクロウなどのフクロウは羽ばたき音がします。

羽ばたき音がしても、狩りに影響が出ないからです。

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フクロウの羽根の柔らかさ

羽ばたき音がしない別の理由としては、フクロウの羽根がとても柔らかいから、ということが言えるでしょう。

フクロウの羽根の表面は、とても細かい毛で覆われており、羽ばたいた時の振動が空気に伝わりにくくなっています。

羽根と羽根が擦れあう音もしないのです。

また、フクロウの羽根は湾曲しており、揚力が高いのも特徴です。

そのため、体の大きさの割には大きな翼をゆっくりと羽ばたくことで、ほぼ無音で飛ぶことができるのです。

まとめ

フクロウの羽ばたき音が無音の理由は、特徴のある風切羽と、フクロウ自体の羽根の柔らかさや翼の大きさ、翼の形による揚力によるものだとわかりました。

人間を襲うフクロウがいても、きっと気づきませんね。

或る写真家によれば、「頭上1メートル足らずを大きなカラフトフクロウが飛んでいったが、全く音が聞こえなかった」そうです。

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